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 「地域で起業」を古里で実現

佐藤 崇裕さん:三木町在住・2015年移住・30代

「株式会社四国遍路」を設立した佐藤さん

歩き遍路で四国88カ所を巡りながら新規事業を模索した佐藤さん。「地域で起業」を古里で実現。

1980年高松市生まれ。東京の大学を卒業後、スポーツメーカーに就職。30歳で地域活性化事業に取り組む会社に転職。2015年に香川県にUターン。
歩き遍路で四国88カ所を巡りながら新規事業を模索した佐藤さん。ひらめいたアイデアはUターン後に香川県の新たな移住支援制度を受け、2016年春、情報などを提供するユニークな事業がスタートした。
2016年1月に「株式会社四国遍路」を設立。

経営者だった祖父の血を受け継ぐ

 高松市に生まれ育ち、大学進学を機に東京に出てからずっと関東で暮らしていました。都内のスポーツメーカーで営業や商品企画、ブランドマネジメントなどを担当し、それなりに充実していました。しかし祖父が創業経営者だったこともあり、「いつかは起業したい」という思いはありました。30歳を前に会社を辞め、起業や経営について学ぶため知人の紹介で地域活性化事業に取り組む会社に転職しました。

 僕のおもな仕事は日本で広く使われ始めた地域通貨にかかわる事業でした。その関係で全国各地をめぐるうちに「これからは地域に根ざした仕事にニーズが集まるはずだ」と実感しました。会社は4年後に退職し、起業の準備を始めました。といっても、当時は古里の香川に戻ることを意識していたわけではなく、具体的な事業構想もありませんでした。そこでまず、歩いて四国88カ所霊場を巡りながら、自分の地元を見直し地域ビジネスのアイデアを探すことにしました。その経験が、今年立ち上げたばかりの「株式会社四国遍路」につながっています。

香川県の支援制度が起業を後押し

 僕が立ち上げた「株式会社四国遍路」は、四国に特化した旅行会社でサービスとしてはお遍路さんをメインターゲットにした宿の紹介や予約システムの提供が始まったばかりです。どう起業すればいいのか、まずは「かがわ産業支援財団」内の「香川よろず支援拠点」を訪ねました。財団では親身に相談に乗ってくれた上に、その後もまめに情報提供やセミナーなどの案内をしてくれます。一番ありがたかったのが「香川県移住者起業支援補助金制度」についての紹介です。これは県が平成27年度から新たに始めた、移住促進と地域の活性化を目指す制度です。この制度に僕の事業計画が採択されたおかげで、思っていた以上に事業を順調に立ち上げることができました。

 こうして四国遍路を事業とする会社の設立に合わせて、2015年に古里・香川県にUターン。現在は祖父母が住んでいた三木町の家を改装して住居兼オフィスとして使っています。会社のサービスとしては現在、宿泊所の紹介や予約システムの提供が始まったばかりです。

住み良さと「ご縁」の深さに満足

 四国は交通網が充実しているので、仕事で使うのは車。インターチェンジが近いので本社から2、3時間も走れば愛媛や高知など四国のどこにでも行けます。日常の足は、自転車です。三木町は高松市の東部にありますが、香川県はコンパクトなので高松市中心部まで自転車なら30分程度。香川県は坂道がなく、ほとんどが平坦で走りやすいですね。

 3月にようやく「四国宿泊予約サイト お遍路さん家」を立ち上げることができました。サイトの制作をお願いしたプログラマーやウエブデザイナーはみな、香川に帰ってきてから知り合った方々。僕は人付き合いが得意なわけではないし、自分を積極的に売り込むタイプではありません。それでも「こんな情報を盛り込みたい」「こんな企画はどうだろう」と話せば、いろんな人を紹介してくれる。「ご縁」を大切にする香川の良さを、しみじみ感じています。


(2016年3月取材)