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香川で地域密着型イベントの提案に生きがい

桑村美奈子さん:高松市在住・2015年移住・30代

桑村美奈子さん

人柄の良さにひかれてすっかり香川が好きになりました。

東京都出身。高円寺に生まれ育ち、東京農大卒業後に公益財団法人オイスカ四国研修センターに勤務、1年半を香川県で暮らす。その後、東京に戻りベンチャー企業の人事担当を経てスポーツイベント関連会社に勤務。2015年3月に退職し、翌月に香川県に移住。地域イベントプロデユーサーとして活躍中。

人柄にひかれ、繰り返し香川を訪問

 初めて香川を訪れたのは12年前です。大学で学んだ農業を通じて国際協力にかかわりたい、と公益(財)オイスカ四国研修センターに入りました。最初の赴任先が綾川町。ここで1年半ほど暮らすうちに、さまざまな分野の専業農家の人たちに出会い、人柄の良さにひかれてすっかり香川が好きになりました。

 そのまま香川に住み着いても良かったのでしょうが、一般企業に勤めて経済の流れや仕事をきちんとこなすことも学びたいと思い、23歳の時に東京の実家に戻り、就職しました。

 再び香川とつながりを持つようになったのは、勤めるスポーツイベント関連会社で働くようになってから。それまでにも年に1度くらいは友人に会いに香川を訪れたり、四国を愛する人たちの任意団体「ホームアイランドプロジェクト(HIP)」のメンバーとNYで阿波踊りを披露したりしました。そんなことから、仲間で香川の地域イベントを企画することになり訪れる頻度が徐々に増えてきました。

 イベントの一つが「サンポート高松トライアスロン」の一環として企画・運営した「四国お遍路ゲイン」です。2〜5人でチームを組んで高松市の中心市街地に散らばったチェックポイントを探しながら、地域の魅力を発見するという内容。大人から子どもまで、多くの方に楽しんでいただきました。こうして何度も香川を訪れるうちに、次第に香川への移住を意識するようになりました。

準グランプリを獲得し、香川に移住を決意

 このイベントをきっかけに、さまざまな企画に声が掛かるようになりました。2014年3月には、高松青年会議所が主催する「高松人間力大賞」で準グランプリを獲得。さらに、四国4県の新聞社主催「四国活性化フォーラム2014」では香川県代表のパネリストを務めさせていただきました。東京在住で、香川県出身でもない私がこうした評価をいただいたことが、驚きでありうれしくもありました。

 こうして活動がどんどん忙しくなり、気がつけば毎週末には東京と香川を往復する日々に。さすがに精神的にも体力的にも限界を感じるようになり、香川への移住を決めました。

 せっかく好きな場所に住むのだから、好きなことを仕事にしたい。そう思いフリーランスで地域イベントプロデューサーとして活動しています。移住にあたって生活費などを試算してみたのですが、家賃も光熱費も東京に比べると断然安い。しばらくはやっていけると判断したのですが、ありがたいことにさっそく企画が持ち込まれ、今はいくつかのプロジェクトを担当しています。そして実は最近、香川の男性と結婚しました。

 香川でイベントをやってみて驚いたのは、親子連れがたくさん参加してくれること。東京で開催していたときのように20代~30代が集中すると想定した企画でも香川では断然親子連れが中心でした。うれしい誤算で、「親子連れや子どもたちで参加できるスポーツイベントを企画できる」という評価をいただきました。

香川ならではの活躍の場を探そう

 東京を離れる際に、友人と会えなくなることを寂しく感じていました。ところがこの1年間を振ってみると、毎月のようにさまざまな友人が訪ねてきてくれました。東京で会っていた時よりもゆっくりと話ができて、つながりも深くなったと感じています。私の古里は下町の高円寺で、近所の人たちにかわいがられて育ちました。だから香川と同じように人柄が温かい高円寺が大好きで、今もよく帰っています。

 ここ香川では副市長と意見交換をするような、東京では考えられないような経験をさせていただいています。決して自分が特別だとは思っていないし、私のように地域を盛り上げる活動をしている人は、都会にはたくさんいます。香川にもいますが、まだまだ少ないという印象です。ですから、都会で頑張っている仲間たちに「香川には、あなたのことを必要としている場がまだまだありますよ」と言いたいですね。

 ひと昔前と違って、今は地方だからこそという夢がかなう時代。地方には、仕事の多様性はないかもしれません。けれど自分が多様性を持つ努力を重ねていけば、スペシャリストでなくてもやっていけると実感しています。


(2016年4月取材)